人事部門の業務効率化を進めるためには?方法や役立つツールをご紹介
概要
近年、転職者の増加や働き方改革の影響もあり、人事業務における負担集中が懸念されています。
人事業務には定形作業や事務作業が多いため、手作業によるヒューマンエラーも課題の一つです。そこで近年では、人事部門の業務を効率化させるためのITツールやRPAが注目を浴びています。
この記事では、人事業務の業務効率化に向けた取り組みについて解説します。
人事業務とは
人事業務とは、企業において発生する「人」に関する業務全般のことです。
人事業務は、社員の勤怠管理や給与計算といった「労務管理」と、新入・中途社員の採用や育成といった「人事管理」の2つに分けられます。
人的資源は企業の原動力となる存在であるため、人事業務の重要性は高いです。
最近では働き方改革の影響もあり、労務時間の管理も以前より厳しく行われるようになりました。
人事業務は企業にとって重要な仕事であると同時に、負担が集中しやすい業務でもあります。
人事業務の現状
企業における人事業務に関する環境は日々変化しています。
人事業務を担当する部署は、労働時間の規制や有給休暇取得の義務付けといった法改正に柔軟に対応することが必要です。
それに加えて、昨今では新型コロナウィルス感染症の流行によって、テレワークや時差出勤といった今までにない対応を迫られている企業も少なくありません。
ここでは、人事業務の現状について見ていきましょう。
人事以外の業務と兼任している方も多い
Indeed Japan株式会社が、採用業務に従事している1,647名の社員を対象に実施した調査によると、採用担当の業務にのみに携わった人材は全体の24%に過ぎないことが明らかになっています。
日常的に人事・採用以外の業務を兼務している社員は全体の7割に上っており、人事以外の業務の傍らで採用業務や勤怠管理といった人事業務を行っている企業が多い実態が明らかになりました。
人材採用以外の業務を行っているため、人材採用が多い時期にはコア業務に注力することが難しいという方も多いかもしれません。
出典:「採用担当者の業務実態」に関する調査を実施 – Indeed プレスルーム
紙で管理している書類が多い
人事業務の現状として、紙で管理している書類が多いという点も挙げられます。
社内のみでIT化が完結する業務とは異なり、人事部は採用プロセスや育成プロセスにおいて外部とのやり取りも多いです。
特に日本では「手書きの履歴書」を重視するという傾向が根強く、履歴書や職務経歴書のペーパーレス化はまだまだ進んでいません。
紙で管理する書類が増えた結果、書類の管理に必要なコストが増大しており、これも人事部の作業効率を低下させている原因となっています。
人事業務の効率化が求められている理由
ここまで人事業務の現状について、人事業務が抱えている具体的な課題点を交えながら解説しました。
人事部は紙で書類管理をする場面が多いこともあり、人事業務の効率化を行う必要が指摘されることも多々あります。
人事業務の効率化が求められている理由について、人手不足の深刻化やペーパーレス化、さらには人事業務特有の広い業務範囲といった観点から解説します。
人手不足の深刻化
人事業務の効率化が求められている背景として、人手不足が深刻化していることが挙げられます。
先述したように、人事部においては人事業務以外の仕事を進める傍らで人事業務をこなしているケースが少なくありません。
また、企業の規模が拡大すると営業部や開発部など、目立つ部署に人員が配属されがちで人事部の人員拡充が後手後手になってしまうこともあります。
人事部が抱えがちな人手不足という問題を解決するために、人事業務の効率化が求められているのです。
紙を使用する業務が多い
人事業務の効率化が求められている2つ目の理由として、人事部には紙を利用する業務が多いという点が挙げられます。
人事部では、履歴書や職務経歴書といった重要な書類を紙で管理していることが多く、これらの書類の管理が人事部のリソースを圧迫しているのは前述の通りです。
そのため、可能な限りペーパーレス化を進めるといった人事業務のプロセス改善が求められています。
ペーパーレス化に向けた具体的な施策は、以下で詳しく紹介します。
業務が多岐にわたり対応範囲が広い
人事業務の効率改善が求められている理由として、人事業務は業務範囲が多岐にわたる傾向にあり、臨機応変な対応が求められるという点が挙げられます。
特に採用業務においては、中途面接者の対応や外部のリクルーター経由での採用など、イレギュラー対応が少なくありません。
さらには、年度末に決算処理や4月に社内研修を実施など、時期によってさまざまな業務を担当するのが人事業務の特徴です。
対応する業務内容が幅広いからこそ、具体的な職務内容に合わせた効率化が求められています。
人事業務を効率化させる方法
人事業務を担当する部署には負担が集中しやすく、人材不足が発生しやすいという特徴があります。
部署の負担を少しでも減らすためには、人事業務の効率化が欠かせません。
しかし、実際にどのような手段で人事業務の効率化を行うことができるのか、気になる方も多いでしょう。
「ペーパーレス化を進める」「ITツールを導入する」「アウトソーシングや派遣を利用する」といった業務効率化の方法について紹介します。
ペーパーレス化を進める
人事業務を効率化するためには、第一にペーパーレス化を進めるという施策が効果的です。
紙での書類管理は、信頼性が担保されやすいといったメリットがある反面、「管理にコストがかかる」「書類紛失のリスクがある」といった多くの問題点があります。
日本企業では未だに手書きの履歴書を重視するところもありますが、人事業務の効率化という観点からすれば、紙での書類管理は真っ先に対処したいポイントです。
履歴書のほかにも、紙で実施していたアンケートをWeb上のフォームに切り替えるといった対応も考えられます。
ITツールの導入
ペーパーレス化と平行して、人事業務をサポートするITツールの導入を検討するのもおすすめです。
人事の業務効率化につながるITツールは、「採用管理システム」「AI-OCR」「RPA」等があげられます。
採用の際に行う「応募者管理」「面接日程の調整」「応募者の分析」等は採用管理システム
の活用が効果的です。紙で送られる履歴書はAI-OCRでデジタル化するのも良いでしょう。
人事業務のなかには、「毎月決まった日に決裁書類を送信する」「定期的に送られる数字を確認する」といった定型化された業務が少なくありません。
パターンが決まっている単純作業は、RPAを導入することで一気に効率化することができます。
また、ITツールの導入は、昨今話題となっているリモートワークとも相性が良いです。
人事業務を効率化するうえでは、ITツールの導入もぜひ検討しましょう。
アウトソーシングや派遣の活用
最近では、企業で必ず発生する人事業務を外注できるサービスも増えています。
アウトソーシングや派遣を活用して、人事業務を外部委託するというのも人事業務効率化に向けた施策の一つです。
人事管理を完全に外部へ委託するケースもあれば、人事業務を専門とする企業から社内へ派遣された社員が常駐するというケースもあります。
人事業務を手軽に外部委託できるため、社内の人材にコア業務へ集中してもらいやすくなるといった点がメリットです。
人事業務を効率化させるITツール
人事業務を効率化するためには、ペーパーレス化と平行したITツールの導入が必要不可欠です。
実際に人事業務を効率化するためには、どのようなITツールを導入するのが良いのか気になるでしょう。
人事業務を効率化できるツールには、人事業務に特化した人事管理システムに加え、単純作業を自動化できるRPAツールやAI-OCRといったものがあります。
人事業務を自動化できるツールについて紹介します。
人事管理システム
人事管理システムは、その名の通り人事業務に特化したITツールの総称です。
給与計算や勤怠管理といった多岐にわたりがちな人事業務を一元管理できる点が強みとなっており、人事部の負担を大きく削減することができます。
また、新卒採用や中途採用といった採用プロセスも管理できる人事管理システムもあり、応募者へのメール配信や面接日程の調整といった業務を一元管理できるため、多くの企業で重宝されています。
RPA
RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称で、ロボットによる業務プロセスの自動化を実現するツールの総称です。
RPAを利用することで、これまでパソコンで行ってきた単純作業を自動化することができます。
後述するようにRPAはパターンが定まった定形作業に強く、人事業務との相性が良いのが特徴です。
RPAはロボットなので、人間が苦痛と感じやすい単純作業でも、24時間365日継続することができます。
RPAツールの導入も人事業務効率化のうえでぜひ視野に入れておきたいポイントです。
AI-OCR
AI-OCRとは、AI技術を活用した文字認識技術のことであり、海外ではICRと呼ぶこともあります。
多少のズレや曖昧さに強いといったAIの特徴を活かし、文字認識の精度を高めることができるのが特徴です。
AI-OCRを導入することで、履歴書や職務経歴書といった紙で管理している書類を容易にデジタル化することができます。
「書類自体は紙で継続するが、情報の管理はデジタル化したい」といったケースでも頻繁に用いられます。
AIを活用しているため文字認識の精度も十分高く、業務効率化に有効なツールです。
単純作業を効率化させるならRPAがおすすめ
RPAは、ルールが決まっている作業を自動化できるのが特徴です。
人事業務には、毎回定まったフォーマットの書類照合や、毎月決まった日に給与計算を行う、交通費の計算を行うなど、定型業務が多く含まれます。
このような業務を効率化させるためには、先程紹介した3つの手法のなかでも特にRPAがおすすめです。
ルールが決まっている定型業務を自動化できる
RPAの特徴として、定められた手順をひたすら繰り返すことができるという点が挙げられます。
いい換えればこれは「ルールが決まっていれば人間が指示を出さなくても働き続けてくれる」ということです。
そのため、「求人サイトから応募者データをダウンロードしフォーマットに沿って加工する」「給与計算のために勤怠時間を集計する」「登用試験の結果の通知」などといったプロセスはすべてRPAによる自動化が可能です。
RPAを利用して業務量を削減することで、人事業務の負担を軽減することができます。
24時間365日稼働できる
RPAは人とは違い、24時間365日稼働し続けることが可能です。
人は長時間単純作業を続けているとどうしても集中力が切れてしまいますが、RPAにはそのような心配がありません。
さらに、出勤時間や残業時間といった制限も気にする必要がありません。
事前にしっかりと設定さえ行っておけば、夜間対応や休日対応もロボットを用いて行うことができます。
24時間365日稼働できるという点は、RPAを導入する上で大きなメリットです。
ヒューマンエラーの防止になる
人間が単純作業を担当する場合、どうしても単純ミスが発生してしまうものです。
特に人事業務では、「給与計算」や「勤怠管理」といったミスの許されない重要な仕事内容が多く、「絶対に間違えてはいけない」というプレッシャーが現場へ負担を与えているケースもあります。
そこでRPAを活用することで、人間の手で行うと発生しがちな計算ミスといったヒューマンエラーを大きく削減することができます。
正確に業務をこなすことができるという点もRPAならではの魅力です。
人手不足の解消
RPAを利用することで、先述したように業務量を大きく削減することができます。
実際、RPAを導入したことで従来は月に2.5時間かかっていた人事業務がほぼゼロに短縮されたといった事例もあります。
事前にしっかりと準備や活用の設計さえ行えば、RPA一台を導入することは人員を拡充することよりも大きな効果を発揮することが少なくありません。
24時間365日稼働ができるため、残業代や休日出勤のための人件費やアウトソーシング費用もぐっと抑えられるでしょう。
人事業務の負担を削減することで人手不足の解消を行えるという恩恵もあります。
コア業務への専念ができる
RPAは、手順に沿ったデータの加工や処理、メール送信といった定型業務が得意です。
RPAを導入すれば、これまでこれらの単純作業に費やしていた時間を浮かせることができます。
人間はその分の時間で、新人研修のカリキュラム作成や採用面接といった、よりクリエイティブなコア業務に集中することが可能です。
心理的な負担を与えがちな単純作業が削減されることで、働きがいが向上することもあります。
コア業務へ専念できるようになるという点もRPAならではのメリットです。
人事業務を効率化させるためのRPAの選び方
RPAを導入することは、人事業務効率化のうえでたくさんのメリットがあることがわかりました。
RPAツールにはさまざまなものがあり、価格重視で機能が絞られているものから高機能で大規模なものまで、多種多様な製品が展開されています。
RPAツールを選ぶうえでは、業務に適した機能がついているかどうかや、使いやすいUIとなっているかといった観点を意識することが重要です。
下記では、RPAツールの選び方について解説します。
業務に適した機能がついている
業務に適した機能がついているかという点は、RPAツールを導入するうえで必ず検討しておきたいポイントです。
人事業務を自動化させる場合には、紙の履歴書をデジタル化できるAI-OCRの連携ができるものを選ぶ、現在使用している採用管理システムに連携ができるものを選ぶなど、自社に合わせた機能があるかを確認しましょう。
ただし、RPAで自動化できるのはあくまでもパターン化された定型業務です。
リストアップした業務内容と照らし合わせながら、自動化したい業務に適した機能がついているかどうかを見極めましょう。
現場の担当者が習得でき、初心者でも簡単に操作ができる
RPAツールを導入する際によく挙げられる課題点として、現場がRPAを使いこなせないために全く浸透せずに終わってしまったというケースが挙げられます。
せっかく高額の導入費用を払っても、現場の担当者が習得することができずに浸透しなかったという結果に終わってしまうのは避けたいものです。
RPAツールのなかには、プログラミングの知識を必要とするものとそうでないものがあります。
画面の見やすさなどUI設計もツールによってさまざまです。現場のITスキルにあったRPAツールを導入しましょう。
サポートが充実している
前の項目とも関連しますが、RPAツールをいきなり使いこなすのは多くの社員にとってハードルが高いといえます。
特に導入時にRPAに仕事内容を指示するシナリオ作成は難易度が高く、現場だけで情報収集するのは至難の業です。
ほとんどのRPAツールは、RPAに関する疑問点やトラブルに対応するためのサポートデスクを設置しています。
しかし、なかには利用が有料であったり、回数制限があったりするものも多いです。
サポートの充実度合いもRPAツールを見極める上で一つの指標となります。
人事業務の効率化を成功させた事例
RPAツールは、小売業や運輸業、製造業などの非常に幅広い企業で導入し、効果を発揮しています。
RPAツールを導入することで実際の人事業務にはどのような恩恵があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
RPAツールを導入して人事業務の効率化を実現した具体例について、2つの事例を紹介します。
勤怠管理の集計業務
人事業務における単純作業の例として、勤怠管理の集計業務が挙げられます。
ある人事部では、
- 勤怠情報を勤怠管理システムで検索
- 勤怠実績をダウンロード
- 社員ごとに勤務時間・時間外労働時間を算出する
- 集計表に転記する
といった業務を自動化し、1年で約25時間の削減に繋がっています。
また、勤怠管理はミスが許されない業務ですので、担当者の精神的負担も大きいです。RPAによって自動化することで、担当者のプレッシャーを軽減し、従業員満足度の向上にもつながります。
採用管理システムの情報集約業務
多くの企業は、ネット上のさまざまな転職エージェントや求人サイトなど、さまざまな媒体で応募者の求人を掲載しています。
異なる媒体からの応募情報を一つの情報管理システムやファイルに集約するために、人事部は各媒体からの募集情報を情報管理システムに転記する必要があります。
ある人事部では、
- 求人サイトから新着の応募者情報を確認する
- 応募者情報をダウンロードする
- 採用管理システムに合わせてフォーマットを変更する
- 採用管理システムに取り込む
という業務を自動化し、業務効率化につなげました。
RPAで自動化することによって、転記ミスをする心配もなく、採用プロセスがよりスムーズに進むようになりました。
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今回は、人事業務の効率化の方法についてご紹介いたしました。
人事業務を効率化するための方法として、業務の自動化が可能なRPAの導入をおすすめします。
しかし、RPAツールは高額なものも多く、なかには月々100万円以上のライセンス料がかかるものもあり、年間1,000万円以上の予算を捻出するのは難しいという企業も少なくありません。
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