中小企業における働き方改革への対応の仕方と施作のポイントを徹底解説

概要

働き方改革とは、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革です。長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現、柔軟な働き方の環境整備など、様々な施策が進められています。
中小企業は、日本国内雇用の約7割を担う重要な存在です。しかし、人手不足やコロナ禍の影響など、様々な課題に直面しています。
この記事では、中小企業の働き方改革への対応の仕方と施策のポイントをご紹介いたします。

働き方改革関連法とは?

働き方改革関連法とは、2019年から施行された一連の法律の総称です。働き方改革を推進するために、労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法などの労働関連法を改正しました。働き方改革関連法の目的は、以下のように厚生労働省が説明しています。

働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることをめざす

具体的には、以下のような施策が行われています。

  • 残業時間の上限規制や割増賃金率の引き上げ
  • 有給休暇の取得義務化や勤務間インターバル制度の導入
  • フレックスタイム制や高度プロフェッショナル制度などの柔軟な働き方の促進
  • 非正規雇用やパートタイム・有期雇用労働者への公正な待遇の確保
  • 産業医や産業保健機能の強化

これらの施策は、すべての企業や従業員が対象となりますが、大企業と中小企業では施行開始時期が異なるものもあります。

参考:働き方改革特設サイト

違反したら罰金は発生する?

働き方改革関連法に違反した場合、罰則が適用される可能性があります。特に重要なものは、残業時間の上限規制です。この規制では、原則として月45時間・年360時間以内に時間外労働を抑えることが求められます。

臨時的な特別な事情があっても、休日労働を含めて年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内にすることが必要です。

この規制に違反した場合、企業や経営者などに対して6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

他にも、有給休暇の取得義務化や産業医・産業保健機能の強化などにも罰則が設けられています。

例えば、有給休暇の取得義務化に違反した場合、企業や経営者などに対して30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。産業医・産業保健機能の強化に違反した場合、企業や経営者などに対して50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

参考:働き方改革特設サイト

働き方改革の中小企業への影響

働き方改革関連法は、すべての企業・従業員が対象となります。しかし、中小企業にとっては特に大きな影響があります。中小企業は日本経済の7割を占める重要な存在ですが、人材確保や生産性向上などの課題も多いです。

働き方改革関連法は、中小企業にとってメリットもデメリットもあります。メリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 労働時間の短縮や有給休暇の取得によって、従業員の健康やモチベーションを向上させることができる
  • フレックスタイム制やテレワークなどの柔軟な働き方を導入することで、従業員のニーズに応えることができる
  • 非正規雇用の待遇改善や同一労働同一賃金の原則の適用によって、人材の採用や定着を促進することができる

デメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 残業時間の上限規制や割増賃金率の引き上げによって、労務コストが増加する可能性がある
  • 有給休暇の取得義務化や同一労働同一賃金の原則の適用によって、労務管理が複雑化する可能性がある
  • フレックスタイム制やテレワークなどの柔軟な働き方を導入するには、職場環境や業務プロセスの見直しが必要になる可能性がある
  • 罰則を回避するためには、勤怠記録方法や残業申請方法などのルールやシステムを整備する必要がある
  • 働き方改革にコストがかかる場合がある。(助成金や補助金などの支援制度を活用することで、働き方改革にかかるコストを軽減することも可能です)

中小企業は、これらのメリットとデメリットをバランスよく考慮しながら、働き方改革に対応していく必要があるでしょう。

働き方改革における、中小企業が取り組むべきこと

では、働き方改革において、中小企業が取り組むべきことはどのようなものがあるのでしょうか。

厚生労働省の働き方改革のポイントにあわせてご紹介いたします。

年次有給休暇の法改正

まずは、年次有給休暇の法改正についてご紹介いたします。年次有給休暇の法改正で必要な対応は、以下の2つです。

  • 有給休暇の時季指定が義務化
  • 最低5日の有給取得が義務化

1つずつ解説していきます。

有給休暇の時季指定が義務化

2019年4月から、働き方改革の一環として、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、年5日の年次有給休暇の確実な取得が使用者(企業)に義務付けられました。

使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、労働者自らの請求、計画年休、または使用者による時季指定のいずれかの方法で年次有給休暇を取得させる必要があります。

使用者は労働者の意見を尊重し、時季指定を行わなければなりません。そして、年次有給休暇管理簿を作成し、3年間の保存が求められます。

この義務を怠った場合には、30万円以下の罰金、又は6ヶ月以下の懲役が課せられます。

最低5日の有給取得が義務化

同じく2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、最低でも5日以上は有給休暇を現実に与えることが義務付けられました。

労働者には年次有給休暇を付与された日を起点として、その日から1年以内に5日以上取得させなければなりません。

また、労働者が年次有給休暇を取得した場合、賃金の減額などの不利益な取り扱いをしないことが求められています。

参考:働き方改革特設サイト

時間外労働の上限規制

働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制も義務付けられています。

対応しなければならない内容は、以下の3つです。

  • 勤務間インターバル制度
  • 長時間労働者への面接指導が義務化
  • 時間外労働に罰則付きの上限

1つずつ解説いたします。

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組みです。労働者の生活時間や睡眠時間を確保するうえで重要な制度であり、労働時間等設定改善法においてその導入が義務付けられました。

具体的には、次のような規定があります。

  • 一般労働者:インターバル時間は11時間以上
  • 高度プロフェッショナル制度適用者:インターバル時間は8時間以上
  • 研究開発業務従事者:インターバル時間は10時間以上

インターバル時間を確保できなかった場合は、事業者は労働者に対して代替休暇を与えるか、あるいは法定外残業手当を支払わなければなりません。

参考:働き方改革特設サイト

長時間労働者への面接指導が義務化

長時間労働者への面接指導とは、月80時間を超える時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積が認められる労働者に対して、産業医等の医師が健康状態や生活習慣などについて指導することです。過労やストレスを背景とする労働者の脳・心臓疾患やメンタル不調の未然防止を目的とするもので、労働安全衛生法においてその実施が義務付けられました。

時間外労働に罰則付きの上限

時間外労働に罰則付きの上限とは、原則として月45時間・年360時間と法律に定められた残業の限度時間です。この限度時間を超える残業をさせることができなくなりました。特別条項付きの36協定を締結している場合でも、次の条件を守らなければ違反となる恐れがあります。

  • 年960時間以内
  • 月100時間未満
  • 2~6ヶ月平均80時間以内

この上限規制に違反した場合は、事業者に対しては300万円以下の罰金刑、責任者に対しては150万円以下の罰金刑、または6ヶ月以下の懲役刑が科せられる可能性があります。こまた、労働者の健康障害や死亡につながった場合は、さらに重い刑罰が適用されることもあります。

参考:働き方改革特設サイト

雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)

2021年4月より、中小企業にも同一労働・同一賃金が求められています。

同一労働・同一賃金とは、企業・団体において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者など)との間で、不合理な待遇差を解消し、能力や業績に応じた公正な処遇を受けることができる社会を実現することを目指すものです。

同一労働・同一賃金の実現に向けては、以下のような取り組みが必要です。

  • 労働時間や契約期間などの雇用条件を見直し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で不合理な差がないか確認する。
  • 基本給や賞与、各種手当、福利厚生などの待遇を見直し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で不合理な差がないか確認する。
  • 職務分析や職務評価を導入し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で同等の仕事内容や責任範囲がある場合は、同等の賃金を支払うようにする。
  • キャリア形成や能力開発の機会を提供し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で不合理な差がないか確認する。
  • 従業員の意見や要望を聞き入れ、社内コミュニケーションや相談窓口を充実させる。

同一労働同一賃金は、従業員のモチベーションや生産性を向上させるだけでなく、人材の確保や活用にもつながります。また、従業員全体の賃金水準を引き上げることで、消費や投資を促進し、日本経済の成長にも寄与します。

参考:働き方改革特設サイト

従業員の健康確保

働き方改革関連法によって、時間外労働の上限規制や産業医による健康管理が強化されました。

事業主は労働者の心身の健康を保持増進するために、労働環境の改善や健康診断の実施などの対策を講じる必要があります。

事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)では、事業主が取り組むべき健康保持増進対策の基本的考え方や推進方法が示されています。

柔軟な働き方の環境整備

働き方改革関連法では、柔軟な働き方の環境整備も義務付けられています。

対応しなければならない内容は、以下の3つです。

  • フレックスタイム制の労働時間の上限が3ヶ月に
  • 副業・兼業やテレワークの促進
  • 高度プロフェッショナル制度

1つずつ解説いたします。

フレックスタイム制の労働時間の上限が3ヶ月に

フレックスタイム制とは、総労働時間の範囲内で働く時間を労働者自身で決めることができる制度です。

これまでは清算期間は最長で1か月間でしたが、法改正により精算期間を3ヶ月とすることが可能になりました。あくまで精算期間の上限が緩和されたのみですので、これまで通り1ヶ月とすることも可能です。

柔軟な働き方に関する検討会|厚生労働省

副業・兼業やテレワークの促進

政府は、副業・兼業の推進に関するガイドラインの中で、社員が副業を希望する場合には認める方向で検討をすることが適当であるとしています。

副業を含む多様な働き方を選択できるようにすることも、働き方改革の目的の一つです。

副業・兼業|厚生労働省

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、年収1075万円以上の要件を満たした、高度な専門知識を使って働く労働者を対象に、労働時間の制限を撤廃する制度です。

この制度は、労働者の自主性や裁量を尊重し、成果に応じた評価や報酬を得られるようにすることで、ワークライフバランスやキャリアアップを支援することを目的にしています。

高度プロフェッショナル制度を適用する場合には、事業主は労働者と協議し、就業規則や雇用契約書などでその内容や範囲を明記するとともに、労働局長に届出を行う必要があります。

中小企業における働き方改革のポイント

働き方改革の取り組み方について紹介しましたが、中小企業が働き方改革への対応を効果的に行うためには、どのようなポイントに注意するべきなのでしょうか。

ここでは、中小企業における働き方改革のポイントをご紹介いたします。

業務の効率化が重要

人手不足が深刻化しているなか、中小企業においては少ない人数で業務を効率的に行うことが求められています。

そのため、業務フローの見直しやツール導入などで業務効率化を行うことが、働き方改革のポイントです。

36協定は遵守できているかどうか、年次有給休暇は確実に取得させられているかなどを確認し、残業が多いなどの場合は業務効率化を図れないか確認する必要があるでしょう。

働き方改革の全容を社員全員に把握させる

働きかた改革を行う場合、全容を社員全員に把握させることも大切です。経営層が把握しているだけでは、

「仕事が終わらないから土日出勤しよう」

「残業代が欲しいからもう少し残っていよう」

など、社員が積極的に動かない可能性もあります。

なぜ今、企業では働き方改革を推進しなければならないのかを、社員全員に理解してもらい、経営層と社員が当事者意識を持って取り組むことが重要です。

助成金を申請する

厚生労働省では、働き方改革推進支援助成金の事業を行っています。

働き方改革推進支援助成金は、

  • 適用猶予業種等対応コース
  • 労働時間短縮・年休推進支援コース
  • 勤務時間インターバル導入コース
  • 労働時間適正管理推進コース
  • 団体推進コース

の5つがあり、業種や条件が異なります。

助成金を申請することでツール導入や賃上げのためのコストを抑えることができるでしょう。

詳しくは、厚生労働省のページを確認し、自社が条件に適合しているかどうか確認してみると良いでしょう。

参考:労働時間等の設定の改善 |厚生労働省

デジタル化・DX化を進める

デジタル化・DX化を進めると、少ない人数で生産性を高めることができます。

デジタル化とは、紙媒体を利用していた請求書などを、電子データにすることです。管理の手間が減ることや、データ化した情報を利用して、CRMを導入して営業活動に活用したり、RPAを導入して業務を自動化させたりすることもできるでしょう。

テレワークの増加や残業時間の削減などにもつながりますので、まずは紙媒体を減らすデジタル化を進めていくことをおすすめいたします。

RPAは働き方改革にも有用

業務を自動化するには、RPAの活用がおすすめです。

RPAとは、Robotic Process Automationの略で、人がパソコン上で行っている業務を、自動で行ってくれるツールのことです。

現在は中小企業でも活用しやすいRPAも増えてきているので、単純作業や繰り返しの業務が多く、残業時間が増えて働き方改革が進まないという方は、導入を検討してみても良いでしょう。

ここでは、RPAが中小企業に有用な理由をご紹介いたします。

業務自動化で残業を減らせる

RPAを導入することで、人がパソコン上で行っている業務を自動化することができます。

例えば、以下のような業務を自動化させることができます。

  • 請求書作成業務
  • 発注リスト転記業務
  • 勤怠集計・通知
  • 競合の価格調査

上記のような繰り返し行われていて、単純作業の業務を自動化させることで、この作業にかかっていた時間を他の業務にかけることができ、残業を減らすことにつながるでしょう。

社員の精神的負担を減らすことにもつながる

何度も同じ動作を繰り返すような作業は、社員の精神的負担になることも多いです。繰り返し作業を長時間行うことで、「面倒くさい」「また同じ作業で飽きた」というようなストレスもかかってしまうでしょう。

このような業務を自動化させることにより、従業員の精神的負担を減らすことができ、またRPAが行うことによってヒューマンエラーを防ぎ、業務時間の短縮になるでしょう。

人はコア業務に注力することができる

業務をRPA化させることによって、浮いた時間に人はコア業務に注力することができます。

いままで、請求書作成などに使っていた時間を、新規営業の時間に充てたり、新しい事業の企画作成の時間に充てたりすることができるようになるでしょう。

そうすることで、業務の効率化や新しい価値の創造に時間を使うことになり、競合優位性を築くことが可能です。

また、社員の業務負担が減り、残業の削減や有給休暇を取りやすくなることはもちろん、社内でのコア業務に注力することができ、社員のモチベーション向上にもつながるでしょう。

中小企業での働き方改革のご相談はアシロボへ

アシロボは、中小企業での導入実績があるRPAです。

プログラミング知識が無くても簡単に使える操作感で、アシロボの無料の説明会に参加することで7時間程度で実践レベルに育成することができます。

また、導入費用も月5万円と導入しやすい手ごろな価格なのもポイントで、時給34円で2人のスタッフが入社するイメージで使用していただけます。

中小企業で

  • 人手不足で残業が増えてしまっている
  • 業務効率化が進まない
  • テレワークの推進ができていない

などのお悩みがある方は、ぜひ一度アシロボにご相談ください。

まとめ

中小企業は、働き方改革によって最低5日の有給取得をさせることや、長時間労働者への指導、従業員の健康確保、柔軟な働き方の整備などが求められています。

人手不足の中で働き方改革を進めることが難しいという場合には、業務効率化やデジタル化などをまず行わなければなりません。

RPAは、繰り返し作業や定型作業を自動化できるツールです。中小企業の方に選ばれている弊社の「アシロボ」は、プログラミング知識が無くても簡単に操作ができ、無料のサポートも充実しています。

中小企業で働き方改革を進めたいけど何から始めればいいかわからない、という方や、業務の自動化を目指している方は、ぜひ一度アシロボにご相談ください。

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